紋章上絵師(もんしよううわえし)の章次は、元恋人の賢子と20年ぶりの再会を果たす。紋入れが原因で別れたのだが、そこには当時、彼女のある想いが秘められており……美しい余韻を残す「蔭桔梗」。浸抜屋(しみぬきや)が見知らぬ女性から依頼された仕事が、ある殺人に繋がる「竜田川」。紺屋の職人が、恋人の元を突然去った真意が胸を突く「色揚げ」など11編。男女の恋愛に絡む謎解きを描く、第103回直木賞受賞作。解説=新保博久
「増山雁金(ますやまかりがね)」
「遺影」
「絹針」
「簪(かんざし)」
「蔭桔梗(かげききよう)」
「弱竹(なよたけ)さんの字」
「十一月五日」
「竜田川(たつたがわ)」
「くれまどう」
「色揚げ」
「校舎惜別」
泡坂妻夫
(アワサカツマオ )1933年東京生まれ。75年「DL2号機事件」が第1回幻影城新人賞佳作となりデビュー。78年『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞、82年『喜劇悲奇劇』で第9回角川小説賞、88年『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞、90年『蔭桔梗』で第103回直木賞を受賞。著書に『亜愛一郎の狼狽』『湖底のまつり』『煙の殺意』『妖女のねむり』『しあわせの書』『生者と死者』『夜光亭の一夜』等がある。奇術界でも著名で、69年に石田天海賞を受賞。2009年没。