「モリーに宇宙服が出はじめたのは春だった。」――肌が宇宙服に変わって飛んでいってしまう人々、恋人に贈られた手編みセーターの中で迷子になる男、誰もが常に金魚鉢を抱えていなければいけない星でのバカンス、自分の寝言を録音しようとした男が味わう恐怖……とびきり奇妙でどこか優しく切ない、奇想に満ちた短編集。岸本佐知子による本邦初訳の一編を追加し、待望の文庫化。2001年度フィリップ・K・ディック賞候補作。解説=渡邊利道
僕らが天王星に着くころ
床屋(バーバー)のテーマ
バンジョー抱えたビート族
最終果実
ふり
母さんの小さな友だち
彗星なし(ノー・コメット)
危険の存在
ピンクの煙
シーズン最終回
セーター
家庭療法
息止めコンテスト
派手なズボン
冷蔵庫の中
最高のプレゼント
魚が伝えるメッセージ
キャッチ
指
ジョイスふたたび(リジョイス)
ぼくの口ひげ
俺たちは自転車を殺す
休暇旅行
大きな一歩
正反対
服役
次善の策
猛暑
儀式
排便
宇宙の白人たち
フィッシュ・ケーキ ※文庫版訳し下ろし
ささやき
月の部屋で会いましょう
謝辞
解説/渡邊利道
レイ・ヴクサヴィッチ
1946年アメリカ生まれ、オレゴン州在住。88年に作家デビューし、大学の研究室でプログラマーとして働くかたわら、SF系の文芸誌に短編を発表する。現在は専業作家。短編「ささやき」で2001年ブラム・ストーカー賞候補、中編“The Wages of Syntax”で04年ネビュラ賞候補。第一短編集である『月の部屋で会いましょう』は01年、ケリー・リンクが主宰する出版社スモール・ビア・プレスから刊行され、フィリップ・K・ディック賞の候補にもなった。
市田泉
(イチダイヅミ )1966年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒。英米文学翻訳家。訳書にジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』、キャロル『薪の結婚』、サマター『図書館島』、ジョイス『人生の真実』、ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』(岸本佐知子と共訳)他多数。