猫の街ウルタールの大学女子カレッジに、存亡に関わる一大危機がもちあがった。大学理事の娘で学生のクラリーが、“覚醒する世界”の男と駆け落ちしてしまったのだ。かつて“遠の旅人”であったカレッジの教授ヴェリットは、“覚醒する世界”に向かったクラリーを連れもどすため、“夢の国”をめぐる長い旅に出る。H・P・ラヴクラフトの作品に着想を得つつ自由に描く、世界幻想文学大賞受賞作。
キジ・ジョンスン
1960年米国アイオワ州生まれ。88年に作家デビューして以来、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞、スタージョン記念賞など、多数の賞に輝く。ショッキングなアイデアと、冷徹さと温かさを併せもった視点から登場人物の心情を丁寧に描き出す、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアやアーシュラ・K・ル・グィンを思わせる作風で、現代SF・ファンタジー界きっての短編の名手として熱烈な支持を集める。小説・コミックの編集者や、カンザス大学SF研究センターの創作講座講師を務めた経験もある。なお、ペンネームの「キジ」は本名の頭文字をつなげた愛称から取ったもの。
三角和代
(ミスミカズヨ )西南学院大学文学部外国語学科卒。英米文学翻訳家。カー「帽子収集狂事件」、ブラウン「シナモンとガンパウダー」、グレアム「罪の壁」、タートン「イヴリン嬢は七回殺される」など訳書多数。