歪んだ楽園の果てに、少年が見たものは。予言者バラードの衝撃作。
「アホウドリを救え……! いますぐ核実験をやめろ……!」十六歳の少年ニールは、タヒチ沖に浮かぶ島、サン・エスプリ島へ向かうデモに参加していた。運動の中心となる四十代の女医、ドクター・バーバラに惹きつけられてしまったのだ。初めは普通の環境保護運動だった。だが、島に居すわった彼らに世界中の注目が集まったときから、なにかが狂いはじめた。楽園の果てにニールが見いだしたものは? 現代の予言者バラードの問題作。訳者あとがき=増田まもる
J・G・バラード
英国を代表する作家。1930年、上海生まれ。「人間が探求しなければならないのは、外宇宙(アウター・スペース)ではなく、内宇宙(インナー・スペース)だ」として、SFの新しい波(ニュー・ウェーブ)運動の先頭に立った。終末世界を独自の筆致で美しく描き出した〈破滅三部作〉と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』や、濃縮小説(コンデンスト・ノベル)と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性が多くの読者を魅了した。『太陽の帝国』はスピルバーグ監督、『クラッシュ』はクローネンバーグ監督、『ハイ・ライズ』はベン・ウィートリー監督によって映画化された。他の著作に《J・G・バラード短編全集》全5巻、『殺す』『コカイン・ナイト』『人生の奇跡J・G・バラード自伝』など。2009年没。
増田まもる
(マスダマモル )1949年宮城県生まれ。早稲田大学文学部中退。英米文学翻訳家。訳書にJ・G・バラード『ミレニアム・ピープル』、『楽園への疾走』、E・マコーマック『隠し部屋を査察して』、『パラダイス・モーテル』他多数。