――ヴェルヌはぼくの父親、ウェルズはぼくの賢明なる伯父さん、ポオは蝙蝠の翼をもった従兄弟、シェリー夫人はぼくの母親だったこともある。バローズやハガード、スティーヴンスンの小説をむさぼり読んだ少年の日のぼく――。幻想と抒情のSF詩人が、読者を幼年時代へ、怪異な夢魔の息づく不可思議な世界へと誘う珠玉短編16編。まえがき=レイ・ブラッドベリ/訳者あとがき=一ノ瀬直二
「さなぎ」
「火の柱」
「ゼロ・アワー」
「あの男」
「脱出する男の時間」
「孤独な散歩者」
「別れも愉し」
「透明少年」
「ぼくの地下室へおいで」
「遠くて長いピクニック」
「泣き叫ぶ女の人」
「微笑」
「浅黒い顔、金色の目」
「市街電車」
「飛行具」
「イカルス・モンゴルフィエ・ライト」
レイ・ブラッドベリ
1920年、アメリカのイリノイ州に生まれ、34年にカリフォルニア州へ移住。少年時代からSFを耽読し、41年にヘンリー・ハースとの共作「振子(ふりこ)」で商業誌デビュー。その後、独特の流麗な文体により“SFの叙情詩人”と呼ばれるまでになる。代表作に『何かが道をやってくる』『火星年代記』『華氏451度』『10月はたそがれの国』など。また56年にはジョン・ヒューストン監督映画『白鯨』の脚本を担当した。2004年、アメリカの芸術家にとって最大の栄誉であるナショナル・メダル・オブ・アーツを受賞。12年没。