サマルカンド一の絨緞乗りターリクは、絨緞競争の最中に助けた謎めいた女に、絨緞でカリフの治めるバグダッドに行ってくれないかともちかけられる。だが、街の外に広がる砂漠には恐ろしい魔人がいる。いったんは断ったものの、たったひとりの弟が女の口車に乗せられてバグダッドに向かうのを知り、慌ててあとを追う。砂漠に花開く白亜の街、不気味な魔人、翼ある象牙の馬……千夜一夜的世界を舞台にした魔法ファンタジー三部作開幕。訳者あとがき=酒寄進一
カイ・マイヤー
1969年ドイツ、リューベック生まれ。大学で映画、演劇、哲学を学び、ジャーナリストを経て作家に。1993年Der Kreuzworträtsel-Mörderでデビュー。ドイツの伝承を題材にした怪奇幻想文学で知られるようになる。その後ファンタジー系の児童文学を相次いで発表。『鏡のなかの迷宮』『氷の心臓』などが、日本でも翻訳刊行されている。現在はドイツ中部のラインラント在住。
酒寄進一
(サカヨリシンイチ )ドイツ文学翻訳家、和光大学教授。主な訳書として、2012年本屋大賞翻訳小説部門第1位に選ばれたシーラッハ『犯罪』、2021年日本子どもの本研究会第5回作品賞特別賞を受賞したコルドン〈ベルリン三部作〉、ヘッセ『デーミアン』、ブレヒト『アルトゥロ・ウイの興隆/コーカサスの白墨の輪』、ケストナー『終戦日記一九四五』、ノイハウス『友情よここで終われ』、ザルテン『バンビ――森に生きる』などがある。