いつもより遅めの通勤途中、僕は駅のホームで偶然、高校の同級生・二和美咲の姿を目撃した。他人の空似ではなく、十八歳のままの彼女を──。誰も不思議に感じないようだが、彼女に恋していた僕だけが違和感を拭えない。彼女が十八歳に留まる原因は最初の高校三年生の日々にある? 僕は友人や恩師を訪ね、調べ始めた。注目の俊英が贈る、ファンタスティックな追憶のミステリ。解説=若林踏
浅倉秋成
(アサクラアキナリ )1989年生まれ。2012年に『ノワール・レヴナント』で第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞し、デビュー。日常の中に不思議なエッセンスを効かせた独特の作風が注目を集め、20年に『教室が、ひとりになるまで』が第73回日本推理作家協会賞、第20回本格ミステリ大賞の候補となる。著作は他に、『フラッガーの方程式』『失恋の準備をお願いします』がある。