神田神保町で「本の探偵」の広告を掲げて古書店を営む須藤の元に、三十年近く前に失踪したある人物を探して欲しいという依頼が舞い込んだ。森田一郎というその男は、戦後期に日本の文化復興に尽力するという名目でわいせつ文書を出版し、裁判で有罪の判決を受けていた。須藤は古書を糸口に、経歴不明、生死不明の謎の男の探索に乗り出すが……。(『古本屋探偵の事件簿』分冊版) 解説=門井慶喜
紀田順一郎
(キダジュンイチロウ )1935年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業。商社勤務を経て、日本近代史と書誌学を中心とする研究活動に入る。2008年、『幻想と怪奇の時代』で第61回日本推理作家協会賞を受賞。同年には、神奈川文化賞も受賞した。また、06年から12年まで神奈川近代文学館館長を務めている。主な著書に『東京の下層社会』『20世紀モノ語り』『戦後創成期ミステリ日記』『蔵書一代』『古本屋探偵登場』『夜の蔵書家』『神保町の怪人』などがある。訳書に『M・R・ジェイムズ怪談全集1、2』ほか。