フランスのポオと呼ばれ、ヴィリエ・ド・リラダン、モーパッサンの系譜に列なる作風をもって仏英読書人を魅了した、鬼才ルヴェル。恐怖と残酷、謎や意外性に満ち、ペーソスと人情味を湛える作品群は、戦前〈新青年〉等に訳載されて時の探偵文壇を熱狂させ、揺籃期にあった国内の創作活動に多大な影響を与えたといわれる。31篇収録。エッセイ=田中早苗・小酒井不木・甲賀三郎・江戸川乱歩・夢野久作/解説=牧眞司
*第4位『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリーベスト10/作家部門/評論家部門
「或る精神異常者」
「麻酔剤」
「幻想」
「犬舎」
「孤独」
「誰?」
「闇と寂寞」
「生さぬ児」
「碧眼」
「麦畑」
「乞食」
「青蠅」
「フェリシテ」
「ふみたば」
「暗中の接吻」
「ペルゴレーズ街の殺人事件」
「老嬢と猫」
「小さきもの」
「情状酌量」
「集金掛」
「父」
「十時五十分の急行」
「ピストルの蠱惑」
「二人の母親」
「蕩児ミロン」
「自責」
「誤診」
「見開いた眼」
「無駄骨」
「空家」
「ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海」
モーリス・ルヴェル
1875年フランス生まれ。パリの病院に医師として勤めながら短篇を執筆し、〈ル・ジュルナル〉誌などに発表。英米仏の読書人を魅了し、「フランスのポオ」と賞賛され、ヴィリエ・ド・リラダンの「コント・クリュエル(残酷物語)」に重ねて評価された。日本では戦前に〈新青年〉等に翻訳紹介され、江戸川乱歩、小酒井不木、夢野久作などが絶賛し、時の探偵文壇を熱狂させた。1926年没。