濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰庁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔(メフイストフエレス)の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと『ファウストの劫罰』の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。解説=森英俊
E・C・R・ロラック
1894年イギリス、ロンドン生まれ。1931年、ロバート・マクドナルド首席警部が登場するThe Murder on the Burrowsでデビューする。魅力的な幕開け、膨らみゆく謎、意外な真相といった謎解きの醍醐味を味わえるミステリを多数発表、コリンズ社〈クライム・クラブ〉叢書の看板作家となる。英国探偵小説黄金期において、クリスティに比肩する最良の女流作家の一人である。主な著書に『悪魔と警視庁』『鐘楼の蝙蝠』『曲がり角の死体』『ジョン・ブラウンの死体』『死のチェックメント』がある。1958年没。
藤村裕美
(フジムラヒロミ )國學院大學文学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書に、バークリー「ウィッチフォード毒殺事件」、ロラック「悪魔と警視庁」、「鐘楼の蝙蝠」、アームストロング「始まりはギフトショップ」、マクリーン〈名探偵オルコット〉シリーズなど。