不幸な事故から視力を失った探偵、それがマックス・カラドスである。彼はそのハンディキャップを異常なまでの意志力で克服し、むしろ新たな能力に目覚め、不思議な知覚が芽生えた、とまで言い切っている。《ホームズの時代》最後の名探偵と目されるカラドスの活躍を描いた好短編──第一作「ディオニュシオスの銀貨」にはじまり、「マッシンガム荘の幽霊」など八編を収録した。解説=戸川安宣
「ディオニュシオスの銀貨」
「ストレイスウェイト卿夫人の奸知」
「マッシンガム荘の幽霊」
「毒キノコ」
「へドラム高地の秘密」
「フラットの惨劇」
「靴と銀器」
「カルヴァー・ストリートの犯罪」
アーネスト・ブラマ
1868年イギリス生まれ。本名アーネスト・ブラマ・スミス。農場経営を経て、デビュー作England Farming and Why I Turned It Upを発表。ジャーナリストに転身し、のちに作家ジェローム・K・ジェロームの秘書となり、彼が主宰する〈トゥ?デイ〉誌の編集スタッフに加わる。1900年、カイ・ルンという中国人が語るアラビアン・ナイト風の奇譚を集めたThe Wallet of Kai Lungを刊行。1914年に、ロンドンのメシュイン社からマックス・カラドスの第1短編集Max Carradosを発表した。1942年没。
吉田誠一
(ヨシダセイイチ )1931年生まれ。東京外国語大学英米語科卒。主な訳書に、カー「死時計」、マシスン「名探偵群像」など。1987年没。