ヘミングウェイを初めとする〈失われた世代〉の作家たちに触発されて、一九二〇年代の推理小説界に忽然と登場したハメットは、俗にハードボイルドといわれる作風を確立して、推理小説に革命的な変革をもたらした。ジイドは「今世紀最大の作家」としてハメットを激賞したが、その新鮮な語法、非情な文体は数多くの亜流を輩出するにいたった。名探偵コンティネンタル・オプやサム・スペイドものを中心として、ハメットの神髄を精選して編集した第一集。七編を収録。
ダシール・ハメット
アメリカの作家。1894年生、1961年歿。種々雑多な職業を転々とし、最後にアメリカ随一の民間探偵ピンカートン社の私立探偵となった。このときの体験をもとにしたのが処女長編『血の収穫』である。これによってハードボイルド文学を確立したハメットはコンティネンタル・オプやサム・スペイドなどの魅力的な人物を作り出した。『マルタの鷹』などの長編とともに、短編にも数多くの傑作を残している。