一八八二年夏、内戦に揺れるスーダンへの派兵を前に除隊した、若き英軍将校ハリー。勇敢な軍人を志したはずの彼がなぜ? 出征した友人たちから「臆病者」を意味する三枚の白い羽根が彼のもとに届き、婚約者エスネも羽根を残して去る。汚名を雪ぐべく、ハリーの長く孤独な戦いが始まる。映画化七回に及ぶ歴史冒険小説の金字塔、初の完訳。
A・E・W・メースン
1865年ロンドンに生まれる。オックスフォード大学在学中から舞台俳優として活躍。95年に舞台を引退すると、歴史小説A Romance ofWastdaleを著して作家に転身した。1902年に刊行した冒険小説『サハラに舞う羽根』は大評判となり、何度も映画化されている。10年、長編ミステリ第一作『薔薇荘にて』でパリ警視庁の警部ガブリエル・アノーを創造。24年に発表したアノーものの第二作が、古典的名作として名高い『矢の家』である。その後も終生さまざまなジャンルで旺盛な執筆活動を続けた。ほかの作品に『モン・ブランの処女』『オパールの囚人』など。48年没。
古賀弥生
(コガヤヨイ )東京女子大学文理学部英米文学科卒。ブラッドリー『パイは小さな秘密を運ぶ』『人形遣いと絞首台』『水晶玉は嘘をつく?』、ナイト『夏の沈黙』、マカルパイン『青鉛筆の女』など訳書多数。