かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。
……それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気チャンネルで突如、名探偵の弾劾が始まった。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だ。「名探偵に人生を奪われた。私は五狐焚風を絶対に許さない」と語る謎の告発者とは? 名探偵の助手だった鳴宮夕暮――わたしは、かつての名探偵――風とともに、過去の推理を検証する旅に出る。
桜庭一樹
(サクラバカズキ )1999年「夜空に、満天の星」(『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーディアン』と改題して刊行)で第1回ファミ通えんため大賞に佳作入選。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年発表の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。07年に『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、翌08年に『私の男』で第138回直木賞を受賞。おもな著書に『少女には向かない職業』『製鉄天使』『荒野』『ファミリーポートレイト』『ばらばら死体の夜』『無花果とムーン』『小説 火の鳥 大地編』『少女を埋める』『紅だ!』『彼女が言わなかったすべてのこと』など、またエッセイ集に〈桜庭一樹読書日記〉シリーズや『東京ディストピア日記』などがある。