運命とは皮肉なものだ。大阪支社から東京本社に転任した雨宮の後を追うように移ってきたのは、由利子ではなく私だったのだ……。大阪時代、会社中の女の子のあこがれの的だった雨宮と由利子がつきあっていることを知っていたのは、社内でも私だけだった。「本社生活に慣れしだい君を呼ぶよ」という男の一時逃れの言葉を護符のように護って大阪に残った由利子。だが、雨宮に、会社の大株主である銀行の重役の令嬢との縁談が持ち上がったのだ……! 週刊朝日、宝石共催の探偵小説コンテストにみごと一等入選した「愛と死を見つめて」をはじめ、わずか5年の間に発表された芦川澄子の全推理作品を集大成した待望の一巻。著者あとがき=芦川澄子/解説=戸川安宣
「愛と死を見つめて」
「マリ子の秘密」
「記憶」
「終着駅」
「安楽椅子」
「大安吉日」
「ボタンの花」
「海辺のゲーム」
「村一番の女房」
「鏡の中で」
「鼬(いたち)」
「飛行機でお行きなさい」
「目は口ほどに」
「女に強くなる法(問題編・解決編)」
「廃墟の死体(問題編・解決編)」
「ありふれた死因」
「道づれ」
芦川澄子
(アシカワスミコ )1927年東京生まれ。〈週刊朝日〉〈宝石〉共催の探偵小説コンテストで第1席を獲得した「愛と死を見つめて」をはじめ、5年あまりの作家活動の中で印象的な作品を多数発表。2014年歿。