判型:四六判仮フランス装
ページ数:318ページ
初版:2022年4月28日
ISBN:978-4-488-02017-0
Cコード:C0093
装画:わみず
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
写真を撮る楽しみを教えてくれた、松原京介の不可解な死。離婚話で揉めていた彼の妻は、関与が疑われたものの、死亡時刻にはタクシーに乗っていた。どこをどう見ても、不運な事故としか考えられない状況だったが──恩人の死をその妻の仕業と確信した駆け出しカメラマンの安見直行は、祖母の助言によって六角法衣店を訪れる。店の主は代々京の辻や橋に立ち、道のさざめきから神託を受け、失せ物を見つけ出すことができるというのだ。
直行は恩人の死亡事故を他殺と証明する証拠を探して欲しいと依頼するが、若くて無愛想な店主・六角聡明からは、けんもほろろに断られてしまう。だが、直行の撮った一枚の写真がきっかけで、六角は事件の証拠探しに協力を約束する。
現代のガジェットによって構成された不可能犯罪を、緻密な論証で見事に解き明かす表題作ほか全五編を収録。第十六回ミステリーズ!新人賞受賞者による出色のデビュー連作集。
第一話 431秒後の殺人
これは計算尽くで偶然の可能性を限りなく必然に近くなるまで高めた――殺人事件だよ。
第二話 睨み目の穴蔵の殺人
最近、お客さんから「襖の武将の目が動いた、絵の中から睨まれた」なんて言われるんです。
第三話 眠れる映画館の殺人
幽霊でもない限り、無理やん? だって誰にも首を絞めたりする時間なんかなかったやんか。
第四話 照明されない白刃の殺人
オレ達がそいつの後を追って角を曲がるまでに、次の瞬間にはもう通りから姿が消えていたんだ。
第五話 立ち消える死者の殺人
この部屋に入院した人はな、夜中に攫われて二度と戻ってこられへんねんて。
著者あとがき
床品美帆
(ユカシナミホ )1987年大阪府生まれ。同志社大学卒。2017年、「赤羽猫の怪」が第15回北区内田康夫ミステリー文学賞区長賞を受賞。18年、『レッドカサブランカ』が第28回鮎川哲也賞最終候補に、「ROKKAKU」が第15回ミステリーズ!新人賞最終候補となる。翌年「ツマビラカ?保健室の不思議な先生?」で第16回ミステリーズ!新人賞を受賞(受賞後、「二万人の目撃者」に改題)。魅力的なキャラクターの軽妙な会話劇に加えて、現代のガジェットを用いた骨太の物理・機械トリックも見どころとなる、新世代の本格ミステリの書き手として期待を集める。