わたしは踏みつぶされるかもしれない。ミサイルに焼かれるかもしれない。それでいい。一番の怪獣は、わたしなのだから――。
高校生のつかさが家に帰ると、妹が父を殺していた。テレビからは東京湾に怪獣が出現したというニュースが流れている。つかさは妹を守るため、父の死体を棄てに東京に行くことを思いつく──「わたしたちの怪獣」
伝説的な“Z級”映画の上映中、街にゾンビが出現。一癖も二癖もある観客たちは映画館内に籠城しようとするが――「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」ほか、時間移動者の絶望を描く「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」、吸血鬼と孤独な女子高生の物語「夜の安らぎ」の全四編を収録。
『七十四秒の旋律と孤独』の著者が描きだす、現実と地続きの異界。
「わたしたちの怪獣」
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」
「夜の安らぎ」
「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」
著者あとがき
久永実木彦
(ヒサナガミキヒコ )東京都出身。2017年、「七十四秒の旋律と孤独」で第8回創元SF短編賞を受賞。書籍デビュー作である『七十四秒の旋律と孤独』が日本SF大賞候補に選ばれる。2022年に発表した短編「わたしたちの怪獣」で再び日本SF大賞の候補となったのち、同作を表題作とした短編集を2023年に刊行した。愛妻家で愛猫家。