崖に聳えるガラスの館。かつてそこで命を落とした少女、千波は再びの生を得て、青年学者の吹原と出会う。しかし二人の前世からの縁と、吹原の一族に潜む愛憎がもたらす過去の悲劇が、千波に新たな試練を課した。前世の思い出を映す未来に導かれるように、千波は崖の館をめざし、歩きはじめる。少女と館を巡る3つの物語、完結。単行本未収録作品「肖像」を併録する。解説=千街晶之
佐々木丸美
(ササキマルミ )1949年北海道生まれ。75年『雪の断章』でデビュー。77年『崖の館』を発表。叙情と幻想を湛えた独自の作風で人気を博す。主な著作に『忘れな草』『花嫁人形』『水に描かれた館』『夢館』『罪灯』などがある。2005年逝去。