明治二十四年、寒さが迫りつつある十月の函館。函館水上警察署の五条文也警部は、人々の注目を集める見慣れぬ毛皮のコート姿の女に目を奪われた。函館生まれながらロシア人の養女になったという彼女の悲しみの過去とは――。表題作をはじめ、英露両国の対立が一触即発の状態までに発展する函館港の危機「聖アンドレイ十字 招かれざる旗」など計四編を収録。フェンシングの名手・五条を筆頭に、函館の平穏を守るべく日夜奔走する刑事たちを活写する、明治警察物語。逢坂剛・池上冬樹氏推薦。著者あとがき=高城高
文庫版では『冬に散る華』と改題しました。
高城高
(コウジョウコウ )1935年北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。大学卒業後は北海道新聞社に勤めながら執筆を続けたが、やがて沈黙。2006年『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』で復活を遂げた。他の著書に『微かなる弔鐘』。08年、『墓標なき墓場』を第1巻とする〈高城高全集〉全4巻(創元推理文庫)が刊行された。