驚異の別世界を描くヴォークトの2傑作中編を収録する。遙か未来、人類は高度な科学技術を駆使しつつも、それらの原理も根本法則さえも忘れ去っていた。地球のリン帝国皇室に生まれたミュータントであるクレインは、帝国を揺るがす危難に立ち向かう。「原子の帝国」/男が得た第三の眼に映るのは、吸血人が跋扈する戦慄の頽廃都市と、妖しくも美しい女の企みだった。「見えざる攻防」 訳者あとがき=吉田誠一
A・E・ヴァン・ヴォークト
1912年カナダ・マニトバ州生まれ。1940年代前半から活躍し、『スラン』(1946)、『非(ナル)Aの世界』(1948)、『宇宙船ビーグル号の冒険』(1950)などの傑作を著した。P・K・ディックやハーラン・エリスンら後進に多大な影響を及ぼし、またフランスではボリス・ヴィアンに愛読されるなど人気を博した。その功績を称えられ、95年にはアメリカSFファンタジー作家協会(SFWA)からグランド・マスター賞を贈られ、96年のワールドコンでは特別賞を授与された。2000年没。2012年には生地カナダで、その名を冠したA・E・ヴァン・ヴォークト賞が創設された。
吉田誠一
(ヨシダセイイチ )1931年生まれ。東京外国語大学英米語科卒。主な訳書に、カー「死時計」、マシスン「名探偵群像」など。1987年没。