女優の旅興行の宣伝のため連れてこられた黒豹が、衆人環視のなか逃げ出して姿をくらました。やがて、ずたずたに引き裂かれた娘の死骸がひとつ、またひとつ──。美しい犠牲者を求めて彷徨する黒い獣を追って警察は奔走するが、その行方は杳として知れない。だが本件の示すあまりに残虐な獣性に、ある疑惑が浮かび……。サスペンスの巨匠による《ブラック》ものを代表する傑作!
ウィリアム・アイリッシュ
1903年、アメリカのニューヨーク生まれ。1926年、普通小説Cover Chargeでデビュー。主にコーネル・ウールリッチという名前で創作活動を行い、1940年以降次々とすぐれたミステリを発表する。哀切な雰囲気描写と緊密な文体で、他の追随を許さぬ独自の境地を切り開き、サスペンスの第一人者となった。代表作に『幻の女』『暁の死線』『黒いカーテン』などがあり、短編にも類まれな手腕を発揮している。また『夜は千の目を持つ』「裏窓」など映画化された作品も多い。1968年没。