1984年春。アイルランドの小さな村で、15歳の少女シェルは孤独な毎日を送っていた。母親を病気で亡くして以来、酒浸(さけびた)りの父と、反抗的な弟、幼い妹の世話に明け暮れていたのだ。気がまぎれるのは、幼なじみの少年デクランや親友のブライディと、くだらない話をしたりこっそり煙草(たばこ)を吸ったりしているときくらい。ところが、デクランにキスをされたことがきっかけで、深い関係になってしまう。やがて妊娠し、周囲に隠しているうちに、思いがけない事態に……
「助けて」と声をあげることができなかった少女の苦難や成長を、美しく切ない筆致で描く。カーネギー賞、ガーディアン賞、ドイツ児童文学賞など数々の賞にノミネートされ、ブランフォード・ボウズ賞とアイリーシュ・ディロン賞に輝いた、シヴォーン・ダウドの伝説的デビュー作!訳者あとがき=宮坂宏美
シヴォーン・ダウド
1960年ロンドン生まれ。オックスフォード大学卒業。2006年、『すばやい澄んだ叫び』で作家デビューし、ブランフォード・ボウズ賞とアイリーシュ・ディロン賞を受賞。07年に『ロンドン・アイの謎』を発表したが、わずか2か月後の8月、乳癌(にゆうがん)のため47歳で逝去。同作でビスト最優秀児童図書賞(現・KPMGアイルランド児童図書賞)を、死後刊行された『ボグ・チャイルド』でカーネギー賞を受賞した。
宮坂宏美
(ミヤサカヒロミ )翻訳家。弘前大学人文学部卒業。主な訳書にメーガン・マクドナルド〈ジュディ・モードとなかまたち〉シリーズ、ミランダ・ジョーンズ〈ランプの精リトル・ジーニー〉シリーズ、シアン・グリフィス〈科学のなぞときマジカル・メイズ〉シリーズ、グレッグ・ピゾーリ『すいかのたね』、マット・ヘイグ『エヴィーのひみつと消えた動物たち』などがある。