大胆な仕掛けと巧みに巡らされた伏線、抒情あふれる筆致を融合させて、ふたつとない作家性を確立した名匠・連城三紀彦。三十年以上に亘る作家人生のなかで紡がれた数多の短編群より傑作を選り抜いて全二巻に纏める。第一巻は、第三回幻影城新人賞受賞から日本推理小説史上に名高い連作〈花葬〉を経て、第九十一回直木賞受賞作『恋文』に至る初期作品十五編を精選。著者の知られざる顔を窺えるエッセイに加えて、巻末には編者による詳細な解題を付す。時代を越えて今なお多くの読者を惹き付けて已まない著者の全貌が把握できる充実の傑作集。
六花の印
菊の塵
桔梗の宿
桐の柩
能師の妻
ベイ・シティに死す
黒髪
花虐の賦
紙の鳥は青ざめて
紅き唇
恋文
裏町
青葉
敷居ぎわ
俺ンちの兎クン
*
ボクの探偵小説観
〈花葬〉シリーズのこと
幻影城へ還る
水の流れに
母の背中
芒の首
哀しい漫才
黒ぶちの眼鏡
彩色のない刺青
連城三紀彦
(レンジョウミキヒコ )1948年愛知県生まれ。早稲田大学卒。78年「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞を受賞、79年に初の著書『暗色コメディ』を刊行する。81年「戻り川心中」が第34回日本推理作家協会賞を、84年『宵待草夜情』が第5回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『恋文』が第91回直木賞を受賞して、恋愛小説の名手として評価を確立する。その後もミステリ的手法を恋愛小説に昇華させた傑作を多数発表。96年『隠れ菊』が第9回柴田錬三郎賞を受賞。2013年没。翌年、第18回日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞した。