世紀末ウィーンに生まれた貴族の血を引く双生児、ゲオルクとユリアン。だが、前者は名家の跡取りとして陸軍学校へゆき、後者は存在を抹消され、ボヘミアの廃城で世間から隔絶され育てられる。やがて、ある事件からゲオルクは故郷を追われ、野心と欲望の都市ハリウッドで映画制作の道に足を踏み入れるが……動乱の1920年代、西洋と東洋の魔都で繰り広げられる、壮麗なる運命譚。
皆川博子
(ミナガワヒロコ )1930年生まれ。72年、児童文学長編『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞。85年『壁──旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞、86年『恋紅』で第95回直木賞、90年『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞、97年『死の泉』で第32回吉川英治文学賞、2012年『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞を受賞する。ミステリから伝奇、幻想文学まで、華麗な筆致で綴られた著作は熱狂的な支持を受けている。『聖餐城』『倒立する塔の殺人』『海賊女王』『影を買う店』『アルモニカ・ディアボリカ』など著作多数。12年、第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。