そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった──〈縫う(縫われる)〉行為を考察する語り手が、読む者を幻視の極北へと導く、類稀なる綺想の結晶ともいうべき表題作、寓話と折紙を介した叔母と甥の戯れを描く「水色の煙」のほか、初文庫化に際し、海の底のような部屋で夢想世界の完成を待ち続ける女の独白を綴る「薔薇密室」ほか4篇の単行本未収録作を加えた18篇を収める。解説=日下三蔵
「結ぶ」
「湖底」
「水色の煙」
「水の琴」
「城館」
「水族写真館」
「レイミア」
「花の眉間尺」
「空の果て」
「川」
「蜘蛛時計」
「火蟻」
「U Bu Me」
「心臓売り」
「薔薇密室」
「薔薇の骨」
「メキシコのメロンパン」
「天使の倉庫(アマンジヤコ)」
皆川博子
(ミナガワヒロコ )1930年生まれ。72年、児童文学長編『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞。85年『壁──旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞、86年『恋紅』で第95回直木賞、90年『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞、97年『死の泉』で第32回吉川英治文学賞、2012年『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞を受賞する。ミステリから伝奇、幻想文学まで、華麗な筆致で綴られた著作は熱狂的な支持を受けている。『聖餐城』『倒立する塔の殺人』『海賊女王』『影を買う店』『アルモニカ・ディアボリカ』など著作多数。12年、第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。