幼い頃に凄まじい幻視体験を持った日高環は、成長してフレスコ画の制作に携わるが、仕事場であった聖堂学園の礼拝堂が爆破され、さらに身近な人物の死に直面する。一人の少年が引き起こした事件を契機として、環は自分が死に強い魅力を感じ始めていることに気づいた――イタリアを彷徨する、骸に魅入られた女の物語。巨匠の初期問題作!
皆川博子
(ミナガワヒロコ )1930年生まれ。72年、児童文学長編『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞。85年『壁──旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞、86年『恋紅』で第95回直木賞、90年『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞、97年『死の泉』で第32回吉川英治文学賞、2012年『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞を受賞する。ミステリから伝奇、幻想文学まで、華麗な筆致で綴られた著作は熱狂的な支持を受けている。『聖餐城』『倒立する塔の殺人』『海賊女王』『影を買う店』『アルモニカ・ディアボリカ』など著作多数。12年、第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。