白堊館の建つ岬と、その下に広がる藍碧の海。美しい光景を乱すように、海上を漂うヨットからは無惨な死体が発見された……堂々たる本格推理を表題に、早逝の探偵作家の魅力が堪能できる新傑作選。愛憎の末に待つ水中の惨劇を描いた犯罪奇譚「水族館異変」、大晦日の夜更けに町人が集団消失してしまう弓太郎捕物帖「ちくてん奇談」など多彩な作風が窺える十五の佳品を選り抜く。解説=小野純一/編集・解題=藤原編集室
「死の快走船」
「なこうど名探偵」
「塑像」
「人喰い風呂」
「水族館異変」
「求婚広告」
「三の字旅行会」
「愛情盗難」
「正札騒動」
「告知板の女」
「香水紳士」
「空中の散歩者」
「氷河婆さん」
「夏芝居四谷怪談」
「ちくてん奇談」
大阪圭吉
(オオサカケイキチ )1912年愛知県生まれ。日本大学商業学校卒。32年「人喰い風呂」が大衆雑誌〈日の出〉創刊号の懸賞小説で佳作入選、同年に甲賀三郎の推薦で「デパートの絞刑吏」を〈新青年〉に発表する。〈新青年〉や〈ぷろふいる〉を中心に本格探偵小説を旺盛に執筆して、36年には初の作品集『死の快走船』を刊行。他の著書に『香水夫人』『人間燈台』などがある。43年に応召、45年にフィリピンのルソン島で没する。