過剰なほどの興味をもって他者の人生を眺めて過ごしてきた老人、サタスウェイト。彼はある屋敷のパーティで不穏な気配を感じとる。過去に起きた自殺事件の謎、来客のなかのある夫婦のあいだに張り詰める緊張の糸。その夜屋敷を訪れた奇妙な人物ハーリー・クィンにヒントをもらったサタスウェイトは、鋭い観察眼で謎を解きはじめる。クリスティならではの人間描写が光る12編。解説=杉江松恋
アガサ・クリスティ
イギリスの作家。1890年生まれ。1920年に『スタイルズ荘の怪事件』でデビューして以来、長編と短編集あわせて100冊を超す作品を発表した。巧妙な着想と錯綜したプロット構成に、独創的なトリックの加わった『アクロイド殺害事件』や『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』といった多くの作品が、古典的名作としての評価を確立している。71年には長年の功績により、大英帝国勲章(DBE)を授与された。〈ミステリの女王〉たる彼女の創造した名探偵には、エルキュール・ポワロやミス・マープルなどがいる。76年没。
山田順子
(ヤマダジュンコ )1948年福岡県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。主な訳書に、アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』、キング『スタンド・バイ・ミー』、クリスティ『ミス・マープル最初の事件』、リグズ『ハヤブサが守る家』、プルマン『マハラジャのルビー』など。