長病(ながやみ)ののち療養の日々を送るアーサー・ローフォードは、教会墓地の外れに自ら命を絶った異邦人の墓を見いだす。その傍らで眠りこんでしまった彼の顔は、なぜか見知らぬ男のものに変化していた。不可解な事態に困惑する周囲や家族との軋轢に懊悩する中、彼は謎めいた兄妹との出会いを契機に、自身に起きた怪異の解明に没入してゆく。オカルティックな綺想に満ちた英国幻想文学の白眉。
田中西二郎
(タナカセイジロウ )1907年東京生まれ。東京商科大学卒。中央公論社勤務を経て、英米文学翻訳家。代表的な訳書に、ハーマン・メルヴィル『白鯨』、グレアム・グリーン『情事の終り』など。1979年没。