東の海に浮かぶ麗しき小国〈蕃東(ばんどん)〉に暮らす、宮廷の知識や儀礼を司る貴族の家に生まれた青年・宇内(うない)と、その従者を務める十七歳の藍佐(らんざ)。彼らが出合った驚異、あるいは目にすることのなかった神秘が、古典の風格を湛えた瑞々しい(みずみず)筆致で描かれる。幸田露伴(こうだろはん)、澁澤龍彦(しぶさわたつひこ)らの系譜に連なり、古今東西の物語に通じる稀代の語り手による、繊細な細工物のような五篇の綺譚。解説=米澤穂信
「雨竜見物」
「霧と煙」
「海林にて」
「有明中将」
「気獣と宝玉」
西崎憲
(ニシザキケン )1955年青森県生まれ。作曲家、翻訳家、作家、アンソロジスト。2002年に『世界の果ての庭』で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。主な編訳書に『短篇小説日和 英国異色傑作選』『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』、主な訳書としてチェスタトン『四人の申し分なき重罪人』、コッパード『郵便局と蛇』、バークリー『第二の銃声』、『ヴァージニア・ウルフ短篇集』がある。著書に『世界の果ての庭』、歌集『ビットとデシベル』(フラワーしげる名義)など。15年には日本翻訳大賞を創設したほか、16年より文学ムック「たべるのがおそい」の編集長を務めるなど、多様な活動を展開している。