ベルギーを代表する幻想小説作家による、『黒い玉』と対を成す珠玉の短編集。霧深い夜、宿を求めた酒場で行われていたのは、雌豚を見に行く権利を賭けた奇妙なゲーム。それに勝ち、納屋に案内された男が見たものとは――。悪夢のような一夜の体験を淡々と綴り、長く深い余韻を残す傑作「雌豚」、奇妙な味わいの掌編「青い蛇」など16の不気味な物語を収録。解説=垂野創一郎
「翡翠の心臓」
「甘美な戯れ」
「晩にはどこへ?」
「城館の一夜」
「青い蛇」
「モーテルの一行」
「ドナチエンヌとその運命」
「雌豚」
「ベルンカステルの墓地で」
「サンクト=ペテルブルグの貴婦人」
「エルナ 一九四〇年」
「黒い雌鶏」
「夜の悪女たち」
「鏡」
「アマンダ、いったいなぜ?」
「危機」
トーマス・オーウェン
1910年、ベルギー、ルーヴァンの弁護士の家庭に生まれる。犯罪学の研究で博士号を取得。弁護士として企業の法律顧問となる。文芸評論、美術評論、推理小説、幻想小説……と幅広い分野で活躍。著作に『黒い玉──十四の不気味な物語』『青い蛇──十六の不気味な物語』がある。2002年没。