調理師の実果は、念願の三ツ星レストランで働き始めた矢先にケガをして失業、恋人にも逃げられてしまう。不運が重なり思いがけなく休みができた彼女は、あてもないまま瀬戸内海の小島に滞在することに。島民より猫の多い猫島で民宿を営む老夫婦と、釣りや料理を手伝いながらのんびり過ごす実果。そんなある日、島で道に迷った彼女は、気まぐれで営業しているという風変わりな食堂と出会う。主人らしき青年はいるものの大抵は店を空けていて料理をふるまう様子もない、この謎めいた食堂との出会いをきっかけに、実果にささやかな転機が訪れる――。
有間カオル
(アリマカオル )東京都出身。法政大学卒。2009年『太陽のあくび』が第16回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞してデビュー。通販番組のディレクターやブライダルプランナー、ハーブカフェやドヤ街に立つゲストハウスなど、多種多彩なテーマを軽やかな筆致で描く。主な著書に『魔法使いのハーブティー』『招き猫神社のテンテコ舞いな日々』『夢見るレシピ ゲストハウスわすれな荘』『ボタニカル』『荒木町綺譚』がある。