昔馴染みのランスが現れたのは七月の末。彼は偶然知ったある土地成金を標的に、巧妙な詐欺の手口を案出したらしい。堅実に暮す四十二歳の元詐欺師には縁のない話のはずだった。だが今の私にも、店を持ちたいという夢がある。それを叶えてくれるかもしれないこの話に、心は動いた……! 抑制のきいた筆致で名手が描く、絶妙のコンゲーム。
田口俊樹
(タグチトシキ )1950年生まれ、早稲田大学第一文学部卒。英米文学翻訳家。主な訳書、D・ハメット「血の収穫」、R・マクドナルド「動く標的」、R・チャンドラー「長い別れ」、B・テラン「その犬の歩むところ」、L・ブロック「死への祈り」他多数。