八月も終わるころ、小学校にまた子供たちが帰ってきた。汗を飛ばして駆け回る彼らを、三十二歳のチャーリーは密かに見守りつづけた。ここにいてはいけない。それはわかっているはずだったが、一人の少女に心捕われた時、すべての戒めは脳裏から消えていた……。心に病を負った男がカリフォルニアに引き起こす緊迫の心理劇。傑作サスペンス。
マーガレット・ミラー
1915年、カナダのオンタリオ州生まれ。38年、高校の同級生であったケネス・ミラー(ロス・マクドナルド)と結婚。41年The Invisible Wormで作家デビュー。緊張に満ちた心理描写と詩的な文体、最後の一行がもたらす戦慄など、他に類のないサペンスを多く発表。『狙った獣』で56年にMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最秀長編賞を受賞し、83年にはMWA賞グランドマスター賞を受賞する。著作に『悪意の糸』『殺す風』『まるで天使のような』などがある。94年没。