前妻、現夫人、愛人、そしてフィアンセ――人気絶頂のコラムニスト、ラリーを取り巻く四人の女性。彼はひそかに自宅バルコニーの手摺(てすり)に細工をし、四人をディナー・パーティに招いた。ラリーには、そのなかの一人を殺さねばならない切実な理由があったのだ……。一作ごとに趣向を凝らす才人マガーが、犯人ならぬ「被害者捜し」の新手に挑んだ、いつまでも色あせない傑作ミステリ。訳者あとがき=吉野美恵子/解説=深緑野分
パット・マガー
アメリカの作家。1917年生、1985年歿。編集職をへて、1946年、『被害者を捜せ!』を発表。弱冠29歳でものしたこの長編は、犯人でなく被害者を捜すという斬新な趣向が大反響を呼んだ。以後も工夫を凝らした作品を次々著したが、鮮やかな人物造型といい、ドラマティックな展開といい、秀れて現代的なミステリ作法の持ち主だったといえる。代表作に『四人の女』や『七人のおば』などがある。