中国系女性のリディアと、中年の白人男性ビル。ふたりの私立探偵がコンビで、あるいは単身で多様な依頼に取り組む日本オリジナル短編集第2弾。地上げに絡む事件にふたりで当たる「永久に刻まれて」、リディアがカリブ海に赴いて若い娘の失踪を調査する「舟を刻む」、ビルが海辺の町で直面する痛ましい悲劇「少年の日」などに加え、リディアの母が主役となる小品や、美術品専門の私立探偵ジャック・リーが活躍する「春の月見」ほか全7編を収録。解説=大矢博子
「永久に刻まれて」
「千客万来の店」
「舟を刻む」
「少年の日」
「かけがえのない存在」
「チン・ヨンユン乗り出す」
「春の月見」
S・J・ローザン
アメリカの作家。1950年生まれ。様々な職業を経て、90年頃から書き始めたミステリで、ふたりの私立探偵、中国系女性のリディア・チンと白人男性のビル・スミスを生み出し、94年に発表した『チャイナタウン』を第一作とする長編や多くの中短編で活躍させている。『ピアノ・ソナタ』『天を映す早瀬』でシェイマス賞、『どこよりも冷たいところ』でアンソニー賞、『冬そして夜』でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長編賞を、「ペテン師ディランシー」でMWA最優秀短編賞を受賞するなど、現代を代表する私立探偵小説の書き手として高く評価されている。
直良和美
(ナオラカズミ )東京生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書、ローザン「チャイナタウン」「ピアノ・ソナタ」、デ・ジョバンニ「集結」「誘拐」、フレムリン「泣き声は聞こえない」など。