サンテ監獄の厳戒房舎第11号監房は、異常な緊張に包まれていた。2名の婦人を殺害したため、その日の朝、死刑を宣告された凶悪な殺人犯が、無名の手紙に誘導され、いま脱獄しつつある。50メートル背後の闇の中ではメグレ警部の一行が、犯人の背後にひそむ真犯人を捕えるために監視している。歴史的名作『「男の首」に「黄色い犬」を併載。
『男の首』
『黄色い犬』
ジョルジュ・シムノン
1903年、ベルギーのリエージュ生まれ。16歳で新聞記者となり、17歳で小説を執筆。22年にパリに移り住み、20以上の筆名を使い分け、大衆小説を次々に発表。31年の『怪盗レトン』がメグレ初登場作品とされている(端役として顔を出す作品は、それ以前もあった)。100を超えるメグレ警部(後に警視)ものだけではなく、犯罪心理小説ともいうべき作品群で世界中の読者を魅了した。45年にアメリカに移住、10年ほど後、フランスに帰国。その後57年に、スイスに移り住む。72年に、小説執筆からの引退を決めた。89年、ローザンヌで逝去。