ドクター・ホワイト、こちらの話を聞いてください。あなたはアマンダ・オトゥールを殺して、そのあとで彼女の指を四本切断しましたか?
覚えてないわ、とわたしは彼にいう。だが、しつこく甦ってくるイメージがある。
男はわたしをじっと見つめている。わたしは相手の目を見て首を横にふる。
いいえ、まさか。とんでもない。
たしかですか? 一瞬……
アリス・ラプラント
作家、ジャーナリスト。スタンフォード大学などで創作講座を持ち、指導を行っている。2011年に発表した『忘却のパズル』は初のフィクション作品で、医療・健康を扱ったすぐれた文学やノンフィクションに与えられるウェルカム・ブック・プライズを受賞。さらにCWA(英国推理作家協会)ゴールド・ダガーの候補、バリー賞最優秀新人賞、マカヴィティ賞最優秀新人賞の最終候補となる。
その他の著作にA Circle of Wives(2014)、Coming of Age at the End of Days(2015)などがある。
玉木亨
(タマキトオル )1962年東京都生まれ。慶應大学経済学部卒。英米文学翻訳家。主な訳書にクリーヴス『大鴉の啼く冬』『白夜に惑う夏』、ケリー『水時計』、サンソム『蔵書まるごと消失事件』、マン『フランクを始末するには』などがある。