役を生きる俳優の輝き、世界観を作り出す装置、息を潜めた観客たち──すべてが合わさって生まれる「舞台」。華やかで遠く感じるその空間は、自分という役を生き、誰かの人生に思いを馳せる私たちにとって、意外に身近な場所なのかもしれません。ミュージカル、2.5次元、バレエ、ストレート・プレイ……さまざまな舞台を題材に描かれた五編を収録する文庫オリジナル・アンソロジー。
近藤史恵 「ここにいるぼくら」
笹原千波 「宝石さがし」
白尾悠 「おかえり牛魔王」
雛倉さりえ「ダンス・デッサン」
乾ルカ 「モコさんというひと」
近藤史恵
(コンドウフミエ )1969年大阪府生まれ。93年、『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2008年『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞。主な著書に〈ビストロ・パ・マル〉シリーズ、『ねむりねずみ』『ガーデン』『薔薇を拒む』『みかんとひよどり』『それでも旅に出るカフェ』『ホテル・カイザリン』がある。
笹原千波
(ササハラチナミ )1994年生まれ。2020年、「翼は空を忘れない」(日吉真波名義)で第204回Cobalt短編小説新人賞受賞。2022年、「風になるにはまだ」(『Genesis この光が落ちないように』所収)で第13回創元SF短編賞を受賞。他の作品に「手のなかに花なんて」(〈紙魚の手帖〉vol.12所収)がある。
白尾悠
(シラオハルカ )神奈川県生まれ。2017年「アクロス・ザ・ユニバース」で第16回「女による女のためのR-18文学賞」の大賞および読者賞を受賞。18年、改題した同作を含む『いまは、空しか見えない』でデビュー。他の著作に『サード・キッチン』『ゴールドサンセット』がある。
雛倉さりえ
(ヒナクラサリエ )1995年滋賀県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科卒。第11回「女による女のためのR-18文学賞」に応募した「ジェリー・フィッシュ」が最終候補に選出される。同作を表題作とした作品集で2013年に書籍デビュー。主な著作に『ジゼルの叫び』『もう二度と食べることのない果実の味を』『森をひらいて』『アイリス』がある。
乾ルカ
(イヌイルカ )1970年北海道生まれ。2006年「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞し、受賞作を収録した短編集でデビュー。10年『あの日にかえりたい』で第143回直木三十五賞の、『メグル』で第13回大藪春彦賞の候補となる。主な著書に『わたしの忘れ物』『おまえなんかに会いたくない』『葬式同窓会』などがある。