人生の節目に催される冠婚葬祭――冠は成年として認められる成人式を、婚は婚姻の誓約を結ぶ結婚式を、葬は死者の霊を弔う葬式を、祭は先祖の霊を祀る祭事を指します。四つの行事は人生の始まりと終わり、そしてその先も縁を繋いでいきます。現在の、あるいはこれからの私たちと冠婚葬祭をテーマに、現代文芸で活躍する六人の作家があなたに贈る文庫オリジナル・アンソロジー。
飛鳥井千砂「もうすぐ十八歳」
“成年年齢”ってなんだろう。二〇二二年、智佳は十八歳の岐路を想う
寺地はるな「ありふれた特別」
成人式の朝、果乃子は二十年前を思い出す。話題の著者が描くじんわり温かな物語
雪舟えま「二人という旅」
家読みのシガとクローンのナガノ。二人の旅が迎える“おわり”と“はじまり”
嶋津輝「漂泊の道」
葬儀で出会ったうつくしいひとは、いつも彼女らしい喪服を着ていた
高山羽根子「祀(まつ)りの生きもの」
神社のおまつりで手に入れた不思議な生きもの。その正体はゆらゆらと曖昧でよくわからないまま
町田そのこ「六年目の弔い」
夫の祥月命日を、夫の娘と過ごす――わたしと彼女の不思議な関係が向かう先。
飛鳥井千砂
(アスカイチサ )1979年愛知県生まれ。2005年『はるがいったら』で第18回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。主な著書に『アシンメトリー』『タイニー・タイニー・ハッピー』『女の子は、明日も』『そのバケツでは水がくめない』『見つけたいのは、光。』がある。
寺地はるな
(テラチハルナ )1977年佐賀県生まれ。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞してデビュー。21年『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞。主な著書に『大人は泣かないと思っていた』『夜が暗いとはかぎらない』『川のほとりに立つ者は』『白ゆき紅ばら』『わたしたちに翼はいらない』がある。
雪舟えま
(ユキフネエマ )1974年北海道生まれ。2011年に歌集『たんぽるぽる』を、翌年に小説『タラチネ・ドリーム・マイン』を刊行。主な著書に『バージンパンケーキ国分寺』『凍土二人行黒スープ付き』『パラダイスィー8』『緑と楯 ハイスクール・デイズ』がある。
嶋津輝
(シマヅテル )1969年東京都生まれ。2016年「姉といもうと」で第96回オール讀物新人賞を受賞。19年に同作を収録した作品集『スナック墓場』でデビュー(文庫化に際して『駐車場のねこ』と改題)。他の著書に『襷がけの二人』がある。
高山羽根子
(タカヤマハネコ )1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作入選。14年、同作を表題作とした作品集でデビュー。16年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞大賞を、20年「首里の馬」で第163回芥川龍之介賞を受賞。主な著書に『暗闇にレンズ』『パレードのシステム』がある。
町田そのこ
(マチダソノコ )1980年福岡県生まれ。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。翌年、同作を収録した作品集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。21年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。主な著書に『うつくしが丘の不幸の家』『宙(そら)ごはん』『夜明けのはざま』がある。