私たちが生きるこの世界では、映像技術はその誕生以来、兵器として戦争や弾圧に使われてきた。時代に翻弄され、映像の恐るべき力を知りながら、“一族”の女性たちはそれでも映像制作を生業とし続けた。そして今も、無数の監視カメラに取り囲まれたこの街で、親友と私は携帯端末をかざし、小さなレンズの中に世界を映し出している──撮ることの本質に鋭く迫る、芥川賞作家の傑作長編。解説=倉本さおり
高山羽根子
(タカヤマハネコ )1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作入選。14年、同作を表題作とした作品集でデビュー。16年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞大賞を、20年「首里の馬」で第163回芥川龍之介賞を受賞。主な著書に『暗闇にレンズ』『パレードのシステム』がある。