●東雅夫氏――「本全集との出逢いによって総てが始まり、あれよという間に西欧怪奇小説の豊穣な世界へと導かれた」(新版解説より)
「恐怖は人間の最も古い、最も強い情感だ」――H・P・ラヴクラフト。かくして人間は、恐怖を手なずけ、さらには恐怖を愉しむために怪奇小説を発明した。本アンソロジー全5巻には、その代表的な名作が網羅されている。この英米編 III には、科学者である父親の実験材料として育てられた娘と、青年の悲恋を描いたナサニエル・ホーソーンの「ラパチーニの娘」ほか全10編を収録した。解説=平井呈一/新版解説=東雅夫
ナサニエル・ホーソーン「ラパチーニの娘」
チャールズ・ディケンズ「信号手」
イーディス・ウォートン「あとになって」
フィッツ=ジェイムズ・オブライエン「あれは何だったか?」
ラドヤード・キップリング「イムレイの帰還」
A・E・コッパード「アダムとイヴ」
ウィルキー・コリンズ「夢のなかの女」
H・P・ラヴクラフト「ダンウィッチの怪」
アンブローズ・ビアース「怪物」
ウォルター・デ・ラ・メア「シートンのおばさん」
H・P・ラヴクラフト
アメリカの作家。1890年生。ロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスとともに、怪奇小説専門誌〈ウィアード・テイルズ〉で活躍したが、生前は不遇だった。1937年歿。死後の再評価で人気が高まり、現代に至っても、なおカルト的な影響力を誇っている。旧来の怪奇小説の枠組を大きく拡げて、宇宙的恐怖にまで高めた〈クトゥルー神話大系〉を創始した。《ラヴクラフト全集》で、その全貌に触れることができる。