●沼野充義氏――「君を眩暈と陶酔の世界に、歓喜と恐怖の世界に誘おうと、すぐそこで待ちかまえている。」(新版解説より)
「恐怖は人間の最も古い、最も強い情感だ」──H・P・ラヴクラフト。かくして人間は、恐怖を手なずけ、さらには恐怖を愉しむために怪奇小説を発明した。本アンソロジー全5巻には、その代表的な名作が網羅されている。このドイツ・ロシア編には、死んだ美しい女の回向のさなか、身の毛もよだつ妖怪に襲われた神学徒を描くゴーゴリの「妖女(ヴィイ)」をはじめ、全9編を収録した。ドイツ編解説=植田敏郎/ロシア編解説=原卓也/新版解説=沼野充義
【ドイツ編】
ハインリヒ・フォン・クライスト「ロカルノの女乞食」
テオドール・ケルナー「たてごと」
H・H・エーヴェルス「蜘蛛」
E・T・A・ホフマン「イグナーツ・デンナー」
【ロシア編】
ミハイル・アルツィバーシェフ「深夜の幻影」
アレクセイ・レミゾフ「犠牲」
ニコライ・ゴーゴリ「妖女(ヴィイ)」
アントン・チェーホフ「黒衣の僧」
アレクセイ・トルストイ「カリオストロ」