玄関のチャイムが鳴った時、まだ死体は寝袋に入れられ寝室の床の上に横たわっていた。液晶画面を見ると、緑色のジャージを着た若い男が映っていた。「おはようございます、ドーバです。電話でパントマイムのレッスンをお願いしていた──」招かれざる客の闖入により、すべてがややこしい方向へ転がり始める「堂場刑事の多難な休日」など、当代一のへそ曲がり作家による力作四編を収録。解説=小池啓介
「堂場警部補とこぼれたミルク」
「堂場巡査部長最大の事件」
「堂場刑事の多難な休日」
「堂場IV/切実」
蒼井上鷹
(アオイウエタカ )1968年、千葉県生まれ。2004年に「キリング・タイム」で第26回小説推理新人賞を受賞してデビュー。同年発表の受賞第一短編「大松鮨の奇妙な客」で早くも日本推理作家協会賞にノミネートされる。05年、前記2作品を収録した作品集『九杯目には早すぎる』を刊行し、06年には初長編『出られない五人』を発表。