1961年7月2日、神奈川県の山林から女性の刺殺体が発見される。被害者は地元で飲食店を経営していた若い女性。翌日、警察は自動車工場で働く19歳の少年を殺人及び死体遺棄の容疑で逮捕する。――最初はどこにでもある、ありふれた殺人のように思われた。しかし、公判が進むにつれて、法廷では意外な事実が明らかになっていく。果たして、少年は本当に殺人を犯したのか? 戦後日本文学の重鎮が圧倒的な筆致で描破した不朽の裁判小説。第31回日本推理作家協会賞に輝く名作が、最終稿を元に校訂を施した決定版にて甦る。著者あとがき=大岡昇平/解説=新保博久
2023年8月、WOWOW「ドラマW」で放送!
大岡昇平
(オオオカショウヘイ )1909年東京都生まれ。京都帝国大学卒。44年に召集されてフィリピンに赴くが、翌年米軍の俘虜となってレイテ島の収容所に送られる。49年に自らの従軍体験を小説にした『俘虜記』を刊行、第1回横光利一賞を受賞する。翌年発表した『武蔵野夫人』は戦後を代表するベストセラーになり、一躍斯界に名を馳せる。52年『野火』が第3回読売文学賞を、61年『花影』が第15回毎日出版文化賞ならびに第8回新潮社文学賞を、72年『レイテ戦記』が第13回毎日芸術賞を、78年『事件』が第31回日本推理作家協会賞を受賞する。88年没。
推理小説愛好家としても有名で、自らE・S・ガードナー『すねた娘』やイーデン・フィルポッツ『赤毛のレッドメーン』の翻訳も手掛けている。