本の町神田神保町でビルの所有者でもある老古書店主が、不可解な死をとげた。貴重な古書を巡るマニアックな収集家の凶行か、地上げにからむ犯行か。同時刻に隣室で古書談義に花を咲かせていた愛書家グループの面々も捜査の対象にあげられて……。書物の世界に詳しい著者が、古書に魅入られた人々の姿を余すところなく活写した長編推理。
紀田順一郎
(キダジュンイチロウ )1935年横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業。商社勤務を経て、日本近代史と書誌学を中心とする研究活動に入る。2008年、『幻想と怪奇の時代』で第61回日本推理作家協会賞を受賞。同年には、神奈川文化賞も受賞した。また、06年から12年まで神奈川近代文学館館長を務めている。主な著書に『東京の下層社会』『20世紀モノ語り』『戦後創成期ミステリ日記』『蔵書一代』『古本屋探偵登場』『夜の蔵書家』『神保町の怪人』などがある。訳書に『M・R・ジェイムズ怪談全集1、2』ほか。