江戸城雲見櫓に詰める雲見番の亜智一郎は、ひねもす空を眺めて過ごす。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿、実は将軍直属の隠密方なのである。ペルリ来航、安政の大獄、桜田門外の変と、内憂外患こもごも至る幕末、継起する怪事件に立ち向かう四人衆――容姿端麗なれど挙措端正とは言い難い亜智一郎を頭に、天下無双の大力を誇る古山奈津之助、甲賀流忍術百般に通ずる藻湖猛蔵、名は体を表さない芝居通の緋熊重太郎。将軍の命令一下、雲見番の暗中飛躍が始まる! 解説=末國善己
「雲見番拝命」
「補陀落往生」
「地震時計」
「女方の胸」
「ばら印籠」
「薩摩の尼僧」
「大奥の曝頭(しゃれこうべ)」
泡坂妻夫
(アワサカツマオ )1933年東京生まれ。75年「DL2号機事件」が第1回幻影城新人賞佳作となりデビュー。78年『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞、82年『喜劇悲奇劇』で第9回角川小説賞、88年『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞、90年『蔭桔梗』で第103回直木賞を受賞。著書に『亜愛一郎の狼狽』『湖底のまつり』『煙の殺意』『妖女のねむり』『しあわせの書』『生者と死者』『夜光亭の一夜』等がある。奇術界でも著名で、69年に石田天海賞を受賞。2009年没。