*第75回日本推理作家協会賞【評論・研究部門】受賞作
第4巻には本邦初紹介のブラウンリッグ「服従」などアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞受賞作3編を含む、大家から知られざる小説巧者まで多士済々の全13編を収録。評論では1950年代以降の米国ミステリ界の変化を丹念に追い、MWA賞受賞作が短編小説の最先端だった時期に到るまでを分析、さらに隣接ジャンル〈幻想と怪奇〉で育った作家がミステリに与えた影響も考察する。
「争いの夜」ロバート・ターナー 門野集訳
「獲物(ルート)のL」ローレンス・トリート 門野集訳
「高速道路の殺人者」ウィリアム・P・マッギヴァーン 白須清美訳
「正義の人」ヘンリイ・スレッサー 藤村裕美訳
「トニーのために歌おう」ジャック・リッチー 藤村裕美訳
「戦争ごっこ」レイ・ブラッドベリ 直良和美訳
「淋しい場所」オーガスト・ダーレス 藤村裕美訳
「獲物」リチャード・マシスン 白須清美訳
「家じゅうが流感にかかった夜」シャーリイ・ジャクスン 深町眞理子訳
「五時四十八分発」ジョン・チーヴァー 門野集訳
「その向こうは――闇」ウィリアム・オファレル 直良和美訳
「服従」レスリー・アン・ブラウンリッグ 猪俣美江子訳
「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」マージェリー・フィン・ブラウン 深町眞理子訳
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「短編ミステリの二百年」小森収
第五章 四〇年代アメリカ作家の実力(承前)
6 ハードボイルド最後の巨人
7 スピレイン旋風
第六章 ハードボイルドから警察小説へ――マンハントとその周辺
1 マンハントという雑誌
2 雑誌の時代のミステリ作家――リチャード・デミング
3 マンハントのクライムストーリイ
4 エヴァン・ハンター――通俗ハードボイルドの雄
5 警察小説の隆盛
6 エド・マクベイン――五〇年代アメリカミステリの顔
第七章 ヒッチコックの陽の下に――アイデアストーリイの流行とその受容
1 ヘンリイ・スレッサーとアイデアストーリイ
2 C・B・ギルフォードの場合
3 ロバート・アーサーの持ち味
4 アイデアストーリイへの傾斜
5 アイデアストーリイの雄――ジャック・リッチー
6 スレッサー再評価のために
第八章 隣接ジャンルの研究(1)――幻想と怪奇
1 『怪奇小説傑作集』
2 モダンホラーへの道
3 アーカムハウスという出版社
4 パルプ作家を抜け出した男――レイ・ブラッドベリ
5 ファンから作家へ――ロバート・ブロック
6 オーガスト・ダーレスと淋しい場所
7 奇妙なイマジネーションの発動――チャールズ・ボーモント
8 異色作家への道――リチャード・マシスン
9 『13のショック』のショック
10 SFから遠く離れて
第九章 再び雑誌の時代に
1 ジャック・フィニイの世界
2 「くじ」以降のシャーリイ・ジャクスン
3 不安と憂鬱がミステリに接近するとき――ジョン・チーヴァー
4 エドガー賞の殿堂(1)――「ヨットクラブ」まで
5 エドガー賞の殿堂(2)――スリックマガジンからの影響
小森収
(コモリオサム )編集者、評論家、作家。1958年福岡県生まれ。大阪大学人間科学部卒業。演劇評論家、文芸書の編集者として活動するほか書評・ミステリ評論の分野でも精力的に活躍する。主な著書・編書に『小劇場が燃えていた』『はじめて話すけど…』『本の窓から』『都筑道夫 ポケミス全解説』、小説の著作に『終の棲家は海に臨んで』『土曜日の子ども』『明智卿死体検分』がある。2022年、三世紀にわたる短編ミステリの歴史を俯瞰したアンソロジー&評論書『短編ミステリの二百年』(全6巻)で第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞(ともに評論・研究部門)を受賞。
藤村裕美
(フジムラヒロミ )國學院大學文学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書に、バークリー「ウィッチフォード毒殺事件」、ロラック「悪魔と警視庁」、「鐘楼の蝙蝠」、アームストロング「始まりはギフトショップ」、マクリーン〈名探偵オルコット〉シリーズなど。