温厚で小柄な紳士ポンド氏には、筋のとおった談話の最中に突飛な発言をまじえる癖があった。兵士たちが命令に忠実だったゆえに、元帥のもくろみは失敗した。2人の男はあまりにも完全な意見の一致に達したため、片方がもう片方を殺害した──逆説の法則にさえ逆説的に挑戦するポンド氏が語る、論理的かつ意外な真相。〈ブラウン神父〉シリーズの巨匠による8編を新訳にて贈る。解説=西崎憲
「黙示録の三人の騎者」
「ガヘガン大尉の罪」
「博士の意見が一致する時」
「ポンドのパンタルーン」
「名前を出せぬ男」
「恋人たちの指輪」
「恐ろしき色男」
「高すぎる話」
G・K・チェスタトン
1874年イギリス生まれ。作家、評論家。逆説と諧謔の大家として知られ、〈ブラウン神父〉シリーズに代表される短編推理小説は、コナン・ドイルの作品と並んで後世の作家たちに計り知れない影響を与えた。また長編『木曜の男』などに顕著な独特の幻想性により、現在でも熱狂的な読者を獲得している。1936年没。
南條竹則
(ナンジョウタケノリ )1958 年東京に生まれる。東京大学大学院英文科博士課程中退。著書に「怪奇三昧」「英語とは何か」他、訳書にチェスタトン「詩人と狂人たち」「ポンド氏の逆説」「奇商クラブ」「知りすぎた男」「裏切りの塔」、ハーン「怪談」、ラヴクラフト「インスマスの影 クトゥルー神話傑作選」他多数。