シーモア・メリマンは商用の途次に立ち寄ったフランスの製材所でふと不審を覚え、帰国後クラブの喫煙室で披露に及んだ。聴き手の一人ヒラードが非常な興味を示し、密輸ではないか、調べようと提案、二人は休暇を利用して危険に満ちた探索に乗り出した。疑惑は深まるものの決定打を欠く膠着状況が意外な形で打ち破られるに至って、遂にメリマンは警視庁を訪れ経緯を明かすが……。〈サンデー・タイムズ〉紙のミステリ・ベスト99に選ばれた快作。
F・W・クロフツ
1879年、アイルランド、ダブリン生まれ。鉄道技師であったが、病を得て長く休養した間に構想した『樽』を1920年に上梓し、好評を博する。続いて『ポンスン事件』『製材所の秘密』『フローテ公園の殺人』を発表。第5作『フレンチ警部最大の事件』でフレンチ警部を創造し、以後探偵役として定着させた。著書に『クロイドン発12時30分』『サウサンプトンの殺人』『フレンチ警部と毒蛇の謎』『フレンチ警視最初の事件』『殺人者はへまをする』等多数。1957年没。